闘病日記:快適生活17:42


一緒に逃げましょうよ

7が言った。



私は今病院に入院している。
入院の理由は、いわゆる「不治の病」。
10歳ぐらいのときに(記憶があいまいだが)発病して以来、
ずっとこの病院に入っている。

「かわいそうに」
「おそとであそびたいだろうに」
「みんなといっしょにいたいだろうに」

親戚や友達は皆、口をそろえてそういうが、そうでもない。
むしろ快適といってもいい。



元々人付き合いが苦手だった私は、小さいころからイジメの対象になっていた。
しかし、ここに入ってからは、いじめられる心配は、全く無くなった。
ついでに学校に行く必要もなくなった。(家庭教師のようなものがついたが)

有り余るほどの時間を手に入れた私は、そのほとんどをインターネットに費やした。
この病棟は専用回線(無料)を引いているので、
いつでも何時間でも繋げられるのである。(夜は不可)

欲しいものがあったら、ネット通販で買えばいい。
人と話したかったら、出会いチャットに行けばいい。
金を稼ぎたかったら、プログラムを書いて『ベクター』あたりで売ればいい。
別に不都合などないのだ。
ある意味では理想の生活だった。



『一緒に逃げましょうよ』

7が言った。

正直言ってあまり乗り気ではなかった。
が、この生活に飽きていたことも事実だった。
7は物心ついたときからこの病院にいたらしい。
いわゆる『外の世界』というやつを見たことが無いらしい。
さて、こんなやつが『外の世界』とやらを見たらどうなるのか?
ちょっとした興味が沸いた。

「・・・どこへ?」

つづく(?)